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SKY SEEING APPARATUS 

「空」をみる装置。

見上げた空と感情が結びついた時に、

初めて記憶になる空の色や質感。

薄い雲は隣り合う色を混ぜ、

強い陽光は鮮やかな色彩を飛ばす。

この装置は内部に分相ガラスを反射させており、

空の記憶を辿ることのできる光を卒んでいる。

「記憶の中の、ある一瞬の空」をモチーフとしたライティングプロダクト。ガラスの分相度合・光の色温度・アクリルやパラボラのテクスチャ、3要素のバランスを複雑に変えることで、再現不可能な一瞬の空を表現している。人工的な技術と素材の組み合わせで、空の発色を追い求めていくSKY APPARATUSシリーズの作品群は、当たり前の風景は奇跡的な現象の集積であり、私たちは非常に絶妙なバランスで身の回りの現象と共存していることを認識させる。

"GLASCIEL ” (通称:分相ガラス)は、従来のガラスのような機能性ではなく情緒性を優位とする特殊な素材である。ガラスの物体の中で、空という雄大な美しさを表現し得る可能性を感じたが、一方で本物の空を超えられないジレンマもあった。そこで作品にする上であえてガラスという主役を黒子にする表現方法を模索した。ガラスという物質の境界線を超えて、空の光を見つめる行為に昇華されることで、素材の本質的な価値が伝わりやすくなるだろうと考え、光の色彩現象をパラボラの鏡面一杯に映し出すSKY APPPARATUSシリーズの製作を開始した。

2020年の初め、AGC株式会社が開発している分相ガラス “GLASCIEL’'がスタジオに届いた。初めて照明器具を当て光を通したガラスを見た時、普通のガラスでは表せない複雑な色彩の気配を感じた。この分相ガラスは、空が色づく原理と非常に似た仕組みで発色しているのだ。空は様々な色を有するが、それはレイリー散乱と呼ばれる光の現象によるもの。太陽の光が大気中の塵や水蒸気に反射するとき、青い光は分散されやすく、赤い光は分散されにくい性質を持っている。(例えば正午の人の真上に太陽がある時は地上に届くまでの距離が短いので、青い光は分散されず瞳に届き、私たちは青空を見ることができる。)この原理を応用した分相ガラスは、中に屈折率の異なる粒子を均ーに分散させた特殊なガラスで、青色の光が選択的に散乱されるようになっているため、照明を当てると光源に近い方が青くなり、光が届く距離が伸びるほど徐々に赤い色味が残る。

製作した2作品(SKY FORMING APPARATUS, SKY SEEING APPARATUS)は、2022年5月からAGCの工場内にあるAOギャラリーの中で年間展示されている。工場内にアートを設置することでさまざまな素材開発の技術者が、日常のなかで素材をアートとして鑑賞できる状況が生まれた。ガラスに光を通すと起こる現象を、毎日じっくりと観察することで、分相ガラスの中で起こる色の変化だけでなく、分相ガラスを抜けた光にも特徴があることに気付くことができた。現在では、分相ガラスは医療やメディテーションの分野から公共のアートまで大きく活用の可能性を広げている。初めは用途のなかった特殊なガラスが、人の感情に伝わって初めて社会的価値に結びつくことで、 現代で求められているものは機能だけではなく様々な情緒的価値へと移ろっていることに気付かされる。

 

2022年9月より"ABOVE"というプロジェクトを発足し、素材メーカーとクリエイターが様々な分野で実験的なアウトプットを繰り返すことで巻き起こる連鎖的なクリエーションと、 それに伴う社会の需要や価値観の変化を素材開発と作品制作の双方に反映させる長期的な取り組みをはじめた。

ABOVE PROJECT ( 2022~) studio SHOKO NARITA × AGC株式会社

プロジェクトは、3つの「上」を由来に名付けられた。

 

1. 頭上で広がるアイデア

2. 万物の上に一つづきの空

3. 向上を続ける技術

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アートとデザインを横断した活動を行う。光を用いたアートワークの制作をする一方、ブランデイング、プロダクトデザイン、R&Dなどのクライアントワークも幅広く手がける。現象を丁寧に観察し、言葉や思考を整理していきながら、ものごとの本質に近づけるようなプロセスやアウトプットを心がけている。

平澤尚子/ Shoko Hirasawa

アーティスト。デザイナー。1993年生まれ。

2016年武蔵野美術大学卒業後、2017-2018年照明会社勤務。

2020年にstudio SHOKO NARITAを設立。

成田雄基/ Yuki Narita

デザイナー。2016年武蔵野美術大学卒業。

卒業後、2017-2019年インテリアデザイン事務所勤務。

2020 年にstudio SHOKO NARITAを設立。

 

Tokyo Midtown Award2022 アート部門にて準グランプリ受賞。

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